子どもの感情を「否定しない」ということ。「バリデーション」という考え方
「そんなことで泣かないの」
「もう終わったことでしょ」
「なんでそんなに怒るの」
子育てをしていると、こんな言葉をついかけてしまうことはありませんか。
悪気はない。むしろ、早く気持ちを切り替えてほしい、楽になってほしい、という親心からくる言葉です。
でも、こうした言葉を受け続けた子どもは、少しずつこう学んでいきます。
「自分の気持ちは、おかしい」
「感じてはいけない」
「言っても、わかってもらえない」
私たちがフリースクールこらんだむで大切にしているのが、「バリデーション」という考え方です。
■ バリデーションとは何か
バリデーション(Validation)とは、もともと英語で「妥当性を認める」「有効であると確認する」という意味を持つ言葉です。
心理学・支援の文脈では、「相手の感情や経験を、そのまま認め、受け入れること」を指します。
正確には「感情の妥当化」と訳されることもありますが、簡単に言えば、
「あなたがそう感じるのは、おかしくない」
「その気持ちは、ちゃんとある」
と伝えることです。
これは、「何でも許す」「すべてに同意する」ということではありません。
行動ではなく、感情そのものを否定しない、ということです。
■ なぜ子どもにバリデーションが必要なのか
子どもは、自分の感情をうまく言語化する力がまだ育っていません。
何となくモヤモヤする、なんだか怖い、うまく説明できないけど嫌だ――そうした感覚を、大人に受け止めてもらう経験を通じて、子どもは少しずつ「自分の感情を理解する力」を育てていきます。
ところが、感情を否定され続けると、子どもは感情そのものを「なかったこと」にしようとします。
泣かない子、怒らない子、弱音を言わない子――それは「強い子」ではなく、感情を押し込めることを覚えた子かもしれません。
感情を押し込めた子どもは、
・何かあっても「大丈夫」と言い続ける
・困っても助けを求められない
・自分が何を感じているかわからなくなる
そうした状態に陥りやすくなります。
これは、不登校やひきこもり、自己否定感の強さにもつながっていくことがあります。
■ バリデーションの具体的な伝え方
では、実際にどのように子どもに接すればよいのでしょうか。
たとえば、子どもが学校に行きたくないと泣いているとき。
❌ 「そんなことで泣かないの」
❌ 「みんな行ってるんだから大丈夫」
❌ 「何があったの?ちゃんと話して」(問い詰め)
⭕ 「学校、行きたくない気持ちがあるんだね」
⭕ 「それはつらいね」
⭕ 「何があったか、話せそうなら聞かせて」
ポイントは、子どもの言葉や表情から感情を読み取り、それをそのまま言葉にして返すことです。
これを「感情の反射」と呼ぶこともあります。
「つらいんだね」「怖かったんだね」「嫌だったんだね」
たったこれだけの言葉が、子どもにとっては「わかってもらえた」という大きな安心になります。
■ 「共感」と「バリデーション」はどう違うのか?
よく似た言葉に「共感」がありますが、少し違います。
共感(エンパシー)は「相手の気持ちを一緒に感じること」。
バリデーションは「相手の気持ちが存在することを認めること」。
共感は、自分もその感情を感じられることが前提になりがちですが、バリデーションは、自分には理解しきれなくても「あなたがそう感じているのは本当のことだ」と認めることができます。
たとえば、子どもが「虫が怖い」と言ったとき、虫が平気な親であれば共感はしにくいかもしれません。でも「怖いと感じているんだね」とバリデーションすることはできます。
■ こらんだむでの実践
フリースクールこらんだむでは、子どもたちに何かをしてもらう前に、まずその子どもの状態を受け止めることを大切にしています。
今日は話したくない子には、話さなくていい。
何もしたくない子には、何もしなくていい。
泣きたい子には、泣いていい。
「それでいいよ」という場所があることで、子どもは少しずつ自分を取り戻していきます。
バリデーションは、特別な技術ではありません。
子どもの気持ちを「ちゃんとある」と認める、そのシンプルな積み重ねです。
ご家庭でも、ぜひ意識してみてください。
まず「そうなんだね」と受け止めることから。
それだけで、子どもとの関係は少しずつ変わっていきます。
